当社について

はじめに

 日本では、空き家という資産余りの問題が深刻化しつつも、ホームレスやネットカフェ難民など、住居にまつわる課題を抱えた人々が未だ多く取り残されている現状があります。しかし、空き家の所有者がそうした当事者に物件を引き渡すことは、所有者の善意頼みとなってしまい困難です。そこで私たちは、空き家に付加価値をつける過程に、家と仕事に困っている方をうまく巻き込み、ソーシャルビジネスとして継続性のある事業ができないかと考え、創業にいたりました。

 ここでの付加価値とは具体的には、空き家の整理・改修を想定しております。その整理・改修の期間をバイト付きシェルターとして開き、家と仕事に困っている方を受け入れます。そして、そこで生まれた時間と空間をうまく使って、受け入れた方を適切なセーフティネットへ繋げたり、次の仕事に就く支援をしたりします。整理・改修後の空き家は、当社がシェアハウスとして運営し、整理・改修にかかった費用の資金回収を図る予定です。

 

私たちのビジョン

私たちは、「誰もが生きやすい社会」を目指しています。

 社会には様々な理由から「生きづらさ」を抱えている人々がいます。

 人の「生きづらさ」の多くは一見、それぞれの個人的な事情に起因していて、自己責任の問題のように思えるかもしれません。しかし、より俯瞰的に考えてみると、個人ではなく社会の側に、構造的な問題がある場合も少なくはありません。

 例えば昨今、過労や自殺の問題が以前より大きくメディアで取り上げられるようになりました。政府や企業は、その対策を進めるよう迫られています。立場の弱い者を過剰に搾取することが許されてしまう環境があるとき、それを個々の事情としてバラバラに捉え(個人の性格や個別の職場の問題にする等)、一つ一つを当事者だけで対処していては、問題はなかなか解決しません。もっと問題を全体の構造として捉え、社会としての仕組み・ルールを改善していかなければならないのです。逆に考えると、同じ原因で被害者を出し続けるような社会には、その仕組みに欠陥(改善の余地)があるという風にも捉えることができます。

 私たちRenovate Japanは、そのような社会が抱える「生きづらさ」の問題を構造的に捉え、それらの解決に貢献する仕組みを循環するビジネスとして創ることで、「誰もが生きやすい社会」の達成を目指します。特にまず、世の中に余っていると言われているものを、足りないとされているところへ適切に届けることで、社会における経済的な機会の巡り合わせが、より効率的かつ公平になるよう取り組みます。

 

ソーシャルビジネスとは

 

 ソーシャルビジネスとは、営利的な側面を残しつつ、社会問題の解決に貢献することを主な目的としたビジネスです。社会問題の解決に資する取り組みに対し、持続的に収益が生まれる構造を付与することで、その取り組みに携わることへのハードルを下げることが出来ます。また、官公庁とは異なる立場・方法から、社会問題へアプローチすることが出来ます。

解決に臨む社会問題

◆相対的 貧困 の問題

 厚生労働省が2019年に行った日中の目視調査によると、ホームレス状態(※1)の方の数は全国で4500人以上いるとされています。また、東京都による2018年の調査では、ネットカフェなどで生活する住宅喪失者は都内に約4000人いたと推計されています。これらは直接的に家に困っていることが分かっている人の数であり、これが0に近づくことは言うまでもなく重要です。さらには、日本における相対的貧困(※2)層は約6人に1人と言われており、新型コロナウイルスの影響まで加味すると、状況はとても深刻なものと思われます。

 日本は先進国と言われ、生活保護などの制度もありますが、一方で餓死の事件も複数起きており、残念ながら未だ公共政策・制度は完全ではないと言えます。日弁連によると、2018年の生活保護の捕捉率(制度の対象となる水準の収入を下回る人のうち、実際に制度を利用している人の割合)は22.6%と推計されました。イギリスやドイツなどの諸外国では捕捉率は80%前後であり、国際的に見てもとても低いことが分かります。

 貧困と一言でいっても、人によって様々な状況が想定されます。特に、個人的にも複雑な事情があって、生活保護などのセーフティネットに繋がることが出来ない方々もいます。これについて、一般社団法人のつくろい東京ファンドが2020年に行ったアンケート調査では、「家庭の事情から扶養照会に抵抗がある」「劣悪なシェルター環境を経験した」「税金に頼りたくない・頼りにくい」など(※3)の声が拾われました。

 したがって、セーフティネットに繋がらずに、或いは繋がる前に、ある程度の経済的な自立ができて、落ち着いた生活を送れるシェルターへのニーズは少なからずあると私たちは考えています。既に支援を行っている他の団体ともコミュニケーションを取っており、こうした団体から紹介を受ける形でシェルター(改修中の空き家)への入居者を迎える予定です。

※1:厚生労働省による定義は「都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設を故なく起居の場所として日常生活を営んでいる者」となっています。
※2:相対的貧困とは、国民の所得を上から順番に並べた時、その真ん中の人物の所得の半分以下の水準で暮らす状態をいいます。日本の相対的貧困率は15.7%とされ、OECD諸国の中でも高い水準となっています(OECD2017年調査)。
※3:記述式のアンケートであったため、原文ではなく、私たちが回答内容をかみ砕いたものとなっています。ご了承ください。

◆ 偏見や 差別 の問題

 一般的に、外国人や性的少数者等が住宅を探す際、受け入れてもらえる物件の数が著しく減るとされています。実際、法務省が2017年に行った調査によると、日本に住む外国人の約4割が外国籍であることを理由に入居を断られた経験があるということです。弊社代表がかつて住んでいた国際学生寮でも、卒寮した留学生が物件探しに苦労する声をたくさん聞いていました。 

 また、リクルートのアンケート調査(2018年)によると、全国でLGBTを自認している方のうち(有効回答数362人)、セクシュアリティが原因で差別・偏見・困難を経験した人が「賃貸住宅探し」で28.7%、「住宅購入」で31.1%いました。さらに、同社が同年に、全国の不動産オーナーに対し、今後のLGBT入居への意向を尋ねた結果、「入居して欲しくない」が男性同士のカップル入居希望者で27.4%、女性同士のカップルで25.9%、トランスジェンダーで20.3%、同性愛者男性の単身入居で22.8%、同性愛者女性で20.4%となりました。 

 他にも、高齢者や障がい者、生活保護受給者等の入居を避ける物件も多いとされています。 

 私たちは、改修が終わった後の物件について、誰もが尊重されるセーフスペース(心理的に安全な場所)として運営することで、この問題にもアプローチしていきたいと考えています。

◆増加する 空き家 の問題

 

 総務省による2018年の調査では、全国で846万戸(全体の約13.6%)あるとされています。この数は例年増加傾向にあり、野村総研では2033年には全国の戸建てのうち3分の1が空き家になると予測されています。

 空き家が増えてしまう要因としては、高齢化や管理・解体・改修に掛かる費用、固定資産税の仕組みなどが挙げられています。それらの空き家は、防災・防犯、衛生、景観等の面から外部不経済の要因となっているため、地域内では問題視されています。

 全国宅地建物取引業協会連合会が2016年に全国の空き家所有者向けにアンケート調査を行った際は、少なくとも3割の所有者が空き家を賃貸・売却に出したいと回答していました。その中でも整理・改修における課題で悩んでいる所有者と積極的に繋がり、それらを解決することで、私たちはこの問題にアプローチします。

ビジネスモデル

  1. 空き家の持ち主から空き家を借りる、或いは買います。
  2. 運営スタッフがDIY改修で空き家の生活環境を整えていきます。後述しますが、賃貸シェアハウスにすることを想定して改修します。
  3. 家と仕事に困っている方を数名、週~月単位で雇います。バイト付きの短期シェルターのようなイメージです。以降、リノベーターと呼びます。
  4. リノベーターには、改修済みの部屋に住み込みで、運営スタッフのDIY改修をお手伝いしてもらいます。
  5. 運営スタッフは改修期間を通じて、リノベーターの次のステップ形成を支援します。生活・仕事の計画相談や情報提供、ネットワーキングの支援等を適宜行う想定です。状況に応じてスタッフも泊まり込みで支援する他、外部カウンセラーの設置もする予定です。
  6. リノベーターは資金と事業に携わった経歴を得て、次のステップに踏み出します。事業の継続に応じて、次の空き家物件に移動し、引き続き住み込みのDIYを続けることも可能です。
  7. 完成した物件は、賃貸シェアハウスとして運用します。特に、人の多様な在り方を尊重する心理的に安全な空間(セーフスペース)として運営し、差別や偏見に悩む方々を受け入れる体制を築きます。


また、サポーター制度(登録式のオンラインコミュニティ)を設け、学生やシニア、ご近所等の地域の方々を積極的に歓迎し、オープンな形で改修を進めます。サポーターの方々には、お時間のある際に来ていただき、DIYのお手伝いや差し入れ等をご支援いただきます。空き家が改修の場であると同時に、コミュニティを創るための場としても活用できるよう運営します。

 

よくあるご質問

Q. 改修はリノベーター(被支援者)のみで行うのですか?
A. 改修は運営メンバーが中心となって実施します。リノベーターの方々にはそれをお手伝いしてもらいます。

Q. 素人だけの改修で大丈夫ですか?
A. 建築関連の専門的なサポートをしてくださる方々と複数繋がっており、その監修・助言をもとに改修を進めます。DIYでは改修出来ない部分については外注も検討します。

Q. リノベーターの方々はそのままシェアハウスに住み続けるのですか?
A. 完成後は賃貸シェアハウスとなるため、住み続ける場合は相当の賃料を運営に支払うことにはなります。生活保護や次の就労などにその時点で繋がっていれば、これは十分に可能な状況と思われます。

Q. リノベーターはどのように探す予定ですか?
A. 他の支援団体と連携し、そこからこのような形態のシェルターに適性のありそうな方の紹介を受ける予定です。私たちから直接募集する予定はありません。

Q. シェアハウスにはどんな方が住むことを想定していますか?
A. 一人暮らしでコミュニティに強い関心のある方を想定しています。例えば、地方から出てきたばかりの学生や新社会人、海外から来たばかりの留学生などが想像されます。また、賃料がそのままソーシャルビジネスの資金となる特殊な物件であることから、社会問題への意識が高い方であることも予想されます。

Q. 空き家のオーナーさんに賃料は支払うのですか?
A. お支払いしますが、整理・改修の負担をこちらがする分、通常時よりは安くしてもらいます。

Q. 改修費や人件費などの資金回収はどのように図る予定ですか?
A. シェアハウスの賃料とオーナーさんにお支払いする賃料の差額から、長期的に回収します。初期のリスクが高いモデルとなるため、クラウドファンディング等でそのリスクを緩和できれば幸いです。

運営メンバー

甲斐隆之

埼玉県久喜市出身。小1で父を亡くし、母と社会のセーフティネット(遺族年金等)に支えられながら育つ。母の仕事の都合により小4~中1をカナダのバンクーバー付近で過ごし、当時から二国の異なる言語・文化の狭間で生きづらさを感じることが良くあった。一橋大学経済学部に進学後、授業で貧困等の社会問題に触れ、その当事者と自分は生まれた環境が違うに過ぎず、自分は努力できる環境があった故に大学進学等も実現していたことに気付く。以降、学生団体(海外インターンシップ事業の運営団体、国際学生寮の運営団体)では同志らと積極的に活動し、また大学院(奨学金を得てトロント大学へ留学)では開発経済学を専攻した。新卒では日系大手のシンクタンクへ入社し、公共コンサルティングに従事。主に、インフラ政策の準備段階における調査や提案を担当し、1年目の後半からプロジェクトマネージャーを任される等貢献。働きながらボランティアで、国際開発に携わる実務者や研究者、業界を志す学生等を繋ぎ、「志と知の実践」を目指すプラットフォーム(会員500名以上)を運営。2020年10月よりRenovate Japanを起業。

吉田佳織

兵庫県生まれ、東京都育ち。小学生時代、自分の日常と全く異なる9.11やイラク戦争等の世界情勢に衝撃を受け、世界と歴史に興味を持つ。中高では友人に借りた洋書がきっかけでリベラリズムに関心を持ち、根拠のない不平等に疑問を抱くようになる。一橋大学経済学部では経済史(主)、国際関係(副)を専攻し、交換留学先のロンドンUCLでは移民と福祉、都市空間等リベラルアーツを学んだ。勉学以外にも海外インターンシップ事業の運営団体や、モロッコにおけるSDGs啓蒙インターン等に参加し、頭・心・手足を使って実社会と自分の距離を縮め、社会構造の歪みを変えていくことにやりがいを感じた。大学卒業後は、あらゆる人が前向きに生きられる社会を目に見える形で作っていくために、日系大手メーカーに就職し、国内外の新規IT事業開発、海外事業再編等を担当している。元々大企業外でも社会課題を解決する活動に関心があり、甲斐のビジョンに賛同し、現在は週末を中心にRenovate Japanに参画している。

池田大輝

米国ニューヨークで生まれ、10歳まで日本に住み、その後は7年間米国カリフォルニアに滞在。高校生のときに、精神的に不安定な方々の相談に乗るコールセンターで働く。それを機に、社会に対する自身の無力さを感じ、精神的に不安定な方々を対象に自分にできること探し始める。帰国し、一橋大学法学部に進学後、「ソーシャルビジネス」というコンセプトをボーダーレスジャパン代表の田口一成さんによるTEDトークで知り、その社会に対する影響力としての可能性を感じた。そこで、課外活動として海外インターンシップ事業の運営をする国際学生団体に所属することを決め、2年間ソーシャルビジネスを題材とした海外インターンシップやイベントの運営を手掛けた。また、近隣の4大学合同による国際学生寮の運営にも2年間携わり、留学生を含む様々な学生の生活を支援した。現在は大学3年生。Renovate Japanとは別に、友人3人と協力し、学生が自身の働き方について考える機会を作るイベントやサービスを運営している。 

 

木村剛瑠

山形県出身。旅行好きな家族の影響で幼少期から様々な土地を訪れ、「まちづくり」に興味を持つ。また、障がい者や海外出身者が身近にいる環境で育ち、彼らが直面する困難と社会の在り方に疑問をもったり、自身も小中学生の時に周囲との関係性に悩んだりと、コミュニティにおける「生きづらさ」について考えるようになる。一橋大学への進学を機に上京し、生活環境の変化によって「まちづくり」と「生きづらさ」という二つの関心が、「地域変革を通じた生きづらさの解消」という大きな目標に繋がる。大学1、2年次は海外インターンシップ事業を運営する国際学生団体に所属し、「共生社会」をテーマに海外インターンシップやイベントを運営した。他にも、地方創生の事業立案やベトナム戦争に関するスタディツアー等に参加。現在は大学4年生で、社会学部で都市・地域政策を学びながらRenovate Japanに参画している。